被害にあわれた方、ご家族の方へ
犯罪被害後の心理的影響
- 一人で苦しまないで
- トラウマとは
- 被害から間もない時期に起こりやすいこと
- 長期的な反応1 PTSD
- 長期的な反応2 うつ病その他の精神疾患
- 長期的な反応3 体や気持ちの変化
- 遺族の方に表れる反応 -悲嘆反応-
被害から間もない時期に起こりやすいこと
これから挙げることは、犯罪被害のような出来事を体験をした後によく見られる反応です。もちろん、あなたがすべてを経験するわけではありません。この中のたくさんのことを経験しているかもしれませんし、そのうちのごくわずかかもしれません。
被害の直後からしばらくの間(1か月くらい[急性期])は、ほとんどの人はショックによって混乱しています。また、事件へのいろいろな対応(警察や病院に行く)があるため、自分のこころに関心を払う余裕がありません。たいていの場合、後から事件を振り返って、「ああそうだった」と気づくことが多いものです。
犯罪被害直後に見られる反応
あまりに突然の予期できないことについては、人間は対処できません。体もこころも頭も動かないものなのです。その場に立ちすくんでしまうような状況になります。
その結果、次のような反応が見られます。
- 信じられない、現実として受け止められない気持ちがする
- 感情や感覚が麻痺してしまうために恐怖や痛みをあまり感じない
- 頭の中が真っ白になる、何も考えられない、ぼうっとする
- 回りのことが目にはいらない、注意集中できない
- 自分が自分でないような気持ちがする
- 現実感がない、夢の中のような感じがする
- 事件の時のことがよく思い出せない
- さまざまな気持ち(恐怖、怒り、不安、自分を責める気持ち)がわいてくる
- 自分が弱い、何も対処できないという気持ちが強くする
- 気持ちが落ち込んだり、沈み込んだりしてしまう
- 体の反応がある
(どきどきする、冷や汗をかく、手足に力が入らない、手足が冷たい、過呼吸になる)
まわりの人からは、ぼうっとして見えたり、逆に落ち着いているように見えるために、あなたが混乱していることがよくわかってもらえないこともあります。
このような反応は、事件直後から数日くらいの間に見られることが多いものです。 安心できる環境におかれれば、次第に落ち着いていく場合が多いです。
ただし、本人から訴えることが少ないので、周りの人が気をつけてあげることが必要です。
1か月後くらいまで(急性期)に起こりやすいこと
直後のショックが落ち着いた後も、しばらく不安定な時期があります。その時には以下に挙げたような症状が見られることがあります。
- 気持ちがひどく動揺し、混乱していると感じる
- 精神的に非常に不安定だと感じる
- 自分では抑えられないような怒りや悲しみを感じる
- 感情がしょっちゅう変わって落ち着かない
- 気持ちや感覚が自分から切り離されたような状態になる(解離性の症状)
- 感情がわかない、苦しみや悲しみ、怒りなどが感じられない
- ぼうっとして、周囲に注意を払えない
- 事件が現実でない感じ、他人事のような感じがする
- 自分が自分でないような感じがする
- 事件の時の記憶がないところがある
- 事件に関することが頭の中によみがえってくる
- 考えたくないのに頭に浮かぶ
- あたかも事件現場に戻ったような状態を体験する
- 事件の夢を見る
- 事件を思い出させるような状況をできるだけ避けるようにする
- 神経が興奮して落ち着かない
- 夜寝つけない、眠りが浅い、何度も目を覚ますなど睡眠の障害がある
- イライラして落ち着かない。
- 集中力がなくて、テレビが見られない、本が読めない、仕事ができない
- 漠然と不安で落ち着かない
- いつも警戒してびくびくする、物音などに敏感になる
- ちょっとしたことで跳び上がるように驚く
- 食欲がない
このような急性期の状態は、1か月位続くことがありますが、時間とともに軽くなっていく場合には、必ずしも病的なものではありません。しかし、このような心理状態のため、あなたの日常生活や社会生活が損なわれたり、疲労や苦痛がひどい時には、一人で悩まずに精神科や心療内科、その他のこころの機関に相談しましょう。
また、この中の多くの症状が何日も続いている場合には、急性ストレス障害(ASD:Acute Stress Disorder アキュート・ストレス・ディスオーダー)と診断されることがあります。その場合は、精神科や心療内科に相談することをお勧めします。