精神医療、心理関係者の方へ
さまざまな犯罪の被害者への治療・対応
遺族のメンタルヘルスと対応
ここでは、犯罪被害によって家族を亡くされた遺族の方々のメンタルヘルスとその対応についてまとめました。
精神的症状の特徴
被害者遺族の特徴は、暴力的な状況での突然の死別であることに加えて、司法関連のストレスが長期間生じること、さらに周囲からの二次被害の問題があることなど複雑な問題が生じる点にあります。精神的症状の例としては、以下のものが挙げられます。
- 悲嘆反応(死別反応)
- 複雑性悲嘆
注:悲嘆反応の長期化や慢性化については現在まで統一された見解は得られていませんが、一部の研究者達では「複雑性悲嘆(Complicated Grief)」という概念が多く使われています。ですが2012年の段階では複雑性悲嘆はDSMの診断基準には入っておらず、提唱された診断基準という範疇にとどまっています。2013年に改訂されたDSM-5では、Persistent complex bereavement disorderとして、トラウス・ストレス因関連障害の一つに含まれています。どのような症状があるかは、「被害にあわれた方、ご家族の方へ」のページを参照してください。 - うつ病
- 心的外傷後ストレス障害(PTSD)
心理過程の変遷
- 事件後初期
この時期に必要なのは、少しでも眠れる、食べられるなどの最低限の健康管理と、報道被害など外部からのストレスの防止、相談先などの適切な情報提供です。 - 事件後中期
この時期に入ると故人の喪失が実感され、悲しみや辛さ、怒りなどの激しい感情が噴出することが多くみられます。悲嘆反応やPTSD症状、うつ症状などがはっきりした形で現れてくるのはこの時期以降でしょう。 - 事件後後期
この時期以降の回復イメージには個人差が大きくあって、特に医療受診することなく通常の生活に戻る場合もあれば、長期のうつ状態や複雑性悲嘆を呈する場合もあります。また事件後数年経ってから、悲嘆反応が遅れて生じることも考えられます。
対応に際して配慮したいこと
- 遺族の苦痛に配慮する
- 故人を尊重する
- 遺族自身の特性に注意する
- 死別した対象に注意する
- PTSD症状と悲嘆反応の相違に注意する
臨床場面では、遺族はPTSD症状と悲嘆反応が入り混じった形で現れることがよくあります。現時点でどちらがより強いのかを聴取することが重要になります。 - 具体的な生活の目標を意識する
- 快食・快眠・減酒ができる生活の工夫をすること
- 安全・安心・自信・自由の気持ちが持てる場面を増やすこと
- 故人に対しての強い感情はあっても過度に混乱しない範囲に収めること
- 今後の予測ができるように援助する
- ソーシャルサポートの存在を確認する
治療法の種類
ここには現在導入されている治療法を挙げました。詳細については成書を参照してください。
- PTSD・うつについての心理教育および薬物治療
- グリーフカウンセリング
- 関連機関(被害者支援団体など)・自助グループとの連携によるソーシャルワーク
- 複雑性悲嘆に特化した治療法
- 悲嘆を表現する方法
出典;白井明美:第三部第一章 遺族のメンタルヘルスと対応. 小西聖子編「犯罪被害者のメンタルヘルス」, 誠信書房, 2008年より抜粋