医療、心理関係者の方へ
被害後急性期の治療
犯罪被害から間もない時期(被害後1ヶ月以内くらい)の被害者が受診した場合にはどのように対応したらよいでしょうか?
被害者の全般的な状況を把握し、現在必要としている事柄に対処することが重要
基本的には「犯罪被害者の診療にあたっての留意点」で挙げた犯罪被害者の診療の留意点と同じですが、特に急性期では安心や安全の提供、安定化、現実的問題への対処が重要になります。具体的には「犯罪被害者に対する急性期心理社会支援ガイドライン」を参照してください。
薬物療法
現在PTSDの予防としてエビデンスのはっきりした薬はありません。
基本的には既存の精神症状の悪化や、不眠や不安などの対処療法として投薬を行います。ただし、抗不安薬や睡眠薬は、依存性があるため短期に限定することを勧めます。
精神療法
心理学的デブリーフィングについて
急性期での専門的介入では、CISD(Critical Incident Stress Debriefing)に代表される心理学的デブリーフィングが有名ですが、いくつかのメタアナリシスの結果から、一回で終了する心理学的デブリーフィング は、PTSDの予防に有効とはいえないことが報告されています。
支持的精神療法
被害から間もない時期では、被害者が自分の感情を安心して表出でき、自分に起ったことがある程度理解できるようになることを助けるような支持的精神療法は安心して提供できるものですが、PTSDの予防としての有効性はまだ得られていません。
認知行動療法
トラウマに焦点をあてた認知行動療法は外傷体験から3ヶ月以上経過してから行うことが勧められていますが、PTSDの予防にトラウマに焦点をあてた短期(4、5回~)の認知行動療法が有効という研究報告があります。しかし、これも外傷体験から3週間から4週間経った後に行うことが勧められています。
出典:中島聡美:第二部第一章 犯罪被害者治療の実践的組み立てと連携. 小西聖子編「犯罪被害者のメンタルヘルス」, 誠信書房, 2008年. より抜粋