精神医療、心理関係者の方へ
被害者の診断書・意見書・鑑定書を依頼された時に
犯罪被害者の治療に携わる時に、診断書、意見書や鑑定書を求められることがあります。まず、どのような場合に診断書や意見書、鑑定書が必要になるのでしょうか。
- 刑事裁判において被害者が「傷害」を負ったことを立証するために警察や検察から診断書や精神鑑定書を依頼されることがあります。
- 民事裁判において、被害者(あるいは被害者の弁護人)からの依頼の場合には、診断書や意見書を書くことになります。
犯罪被害者の診断書・意見書・鑑定書を書く場合には、以下の点に留意してください。
- 精神疾患の診断を正確に行う
- 診断は、DSMやICDなど客観的な診断基準に基づいて行います。
- 現在の司法で精神疾患の中で「傷害」が認められやすいのはPTSDです。したがって、PTSDの診断に際しては、PTSD臨床診断面接尺度(CAPS)やDSMによる精神障害構造化面接(SCID)などの構造化面接や改訂 出来事インパクト尺度(IES-R)などの客観的指標を用いることが望ましいです。
- 事前に被害者や警察官、検事、弁護士と十分打ち合わせを行う
- 被害や裁判の状況を把握する
- 文書の使用目的を明らかにする
- 自分のできる限界を呈示する。
- 診断書・意見書・鑑定書に必要な内容
- 被害者の疾病名、精神症状とその重症度
- 被害者の精神的症状がいつからどのような原因で発生したかの所見
- 被害者の抱える精神的症状の治療期間の見通し
法廷で証言を求められた場合どうしたらよいでしょうか。
- 証言では何を求められているか
裁判では主に、診断の妥当性や原因が犯罪に関係があるのかどうか、診断の根拠などが争点となります。 - 資料を持って証言できるのか
証言台に資料を持っていくことは原則許されていません。鑑定書を参照して証言することはできます。事前に検察官によく相談してください。
出典:小西聖子:第五部第二章 司法と犯罪被害者-鑑定書と証言の実際., 橋爪きょう子:. 第五部第三章犯罪被害者の鑑定書の書き方の実際.小西聖子編「犯罪被害者のメンタルヘルス」, 誠信書房, 2008年. より抜粋