医療、心理関係者の方へ
心理面接の留意点
ここでは、通常の心理業務として犯罪被害者への心理面接を行う際の留意点をとり挙げました。
- 準備して対応する
事前情報の入手、紹介先など(医療機関、シェルターなど)の情報の確認、適切な面接室など - 通常の治療の枠組みを超えて対応せず、他の機関がより適切であれば紹介を行うa
- クライエントの特徴(個性と現状)を見る
- 犯罪被害者に見られる特徴:過敏さと平静さ、卑小感と疑惑
- 時間の配分をきちんと行う
- インテークでは1時間から1時間30分くらい用意しておく
- 時間の枠を決めその範囲で面接を行う
- 面接のスキル
- 丁寧であること(ゆっくりした雰囲気、丁寧な言葉使い)
- 率直であること(できない約束をしない、必要なことをきちんと伝える)
- 耳を傾けつつ、(被害者の)希望を具体的につかむ
- 事件など辛い体験の話は「体験」として大切に聞き、「事実」としての厳密な追求や即断をしないこと
- 必要だと思ったら折々話を止める
- 有効な言葉かけ
話を「なぞる」:「私は~と理解したのですが、それであっているでしょうか?」など
ねぎらいとアセスメント:「事件の後すぐですと大変なことだったと思うのですが‥」など
クライエントがまとめる手助けをする:「お話くださっていることを理解したいので、○○は○○さんがなさったことですか、お母さんがなさったことですか?」など
クライエントが主観的で混乱している時は、対処や他者を話題にもりこむ:「それでは大変だったでしょう。その時は誰かにそのことをお話なさいましたか?」など
- 初回に確かめるべきこと
- 現時点での脅威、けがや性感染症、妊娠などのおそれなど安全の確保
- 今後の連絡のために:来所の事実を伝えている人、伏せている人、連絡方法、機関名を言ってよいかどうか
- 来所経路、紹介のされ方、返事の必要の有無
- 心理教育は必要だが、学術用語を不用意に使わない
- 薬物療法への導入
- 家族や友人の相談の注意点
相談してきた人自身への援助を忘れない - 社会的要素(特に刑事司法手続きなど)の影響に注意する
- カンファレンスやスーパーヴィジョンが重要
出典:中島聡美:第二部第一章 犯罪被害者治療の実践的組み立てと連携. 小西聖子編「犯罪被害者のメンタルヘルス」, 誠信書房, 2008年. より抜粋