トピックス
- 2023年の刑法改正について
- カウンセリング費用の公費負担制度の更なる充実について
2023年の刑法改正について
2023年7月13日に「刑法及び刑事訴訟法の一部を改正する法律」(令和5年法律第66号)および「性的な姿態を撮影する行為等の処罰及び押収物に記録された性的な姿態の影像に係る電磁的記録の消去等に関する法律」が施行され、性犯罪に関する規定が大きく変わりました。改正のポイントは以下の7点です。
1.強制性交等罪から「不同意性交等罪」へ
従来、強制性交等罪の成立要件となっていた「暴行」、「脅迫」のほか、「アルコール」、「薬物」、「障害」、「睡眠」、「フリーズ状態」、「虐待」、「立場による影響力」などが原因となって、被害者が「同意しない意思を形成したり、表明したり、全うすることが難しい状態」、つまり、「Noと思うこと、Noと言うこと、Noを貫くことが困難な状況」で、性行為やそれに類似する行為がなされた場合は、「不同意性交等罪」や「不同意わいせつ罪」として処罰の対象となります。
2.被害者の年齢による処罰範囲の拡大
16歳未満(15歳以下)の子供に対して、性交等やわいせつな行為がなされた場合は、同意の有無にかかわらず処罰の対象となります。相手が13歳以上16歳未満の時は、行為者と5歳以上差があることが必要です。
3.「性交等」の定義の見直し
旧法では性交、肛門性交、口腔性交が処罰の対象となっていましたが、今回の改正によって、「性交等」には、膣・肛門に身体の一部または物を挿入するわいせつ行為も含まれることになりました。
4.「撮影罪」・「提供罪」の新設
人の性的な部位や下着などを
- ① 正当な理由がないのに、ひそかに撮影する行為
- ② 「イヤ」と言っているのに無理矢理撮影する行為・「イヤ」というのが難しい状況で撮影する行為
- ①、②で撮影された写真・動画を人に提供する行為
は「撮影罪」・「提供罪」として処罰の対象となります。
5.「16歳未満の者に対する面会要求等罪」の新設
16歳未満の子供に対して、わいせつの目的で、
- ① 脅す、嘘をつく、甘い言葉を使うなどして会うことを要求すること
- ② 拒まれたのに繰り返し会うことを要求すること
- ③ 金銭や物を与える、またはその約束をして会うことを要求すること
- ④ ①~③の結果、会うこと
- ⑤ その子供の性的な写真や動画を撮影して送信するように要求すること
は「16歳未満の者に対する面会要求等罪」として処罰の対象となります。
6.公訴時効の延長
性犯罪に関する公訴時効は、被害に遭った時(18歳未満の時は18歳になった時)から
- 不同意性交等致傷罪などは20年
- 不同意性交等罪などは15年
- 不同意わいせつ罪などは12年
に延長されました。
7.被害者の供述記録の取り扱いに関する規定の新設
被害者の供述記録(録音や録画)について、一定の条件下ではこれを証拠とすることができるようになりました。一定の要件を満たす場合に限り、被害者に証人尋問(主尋問)を行う代わりに、事情聴取時の録音や録画などを証拠として取り調べることが認められます。